かんぱねら

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エスカレーターの正しい乗り方とはなにか

先日、駅のエスカレーターに乗っているとアナウンスが流れた。

「歩行は思わぬ事故の元となるため十分ご注意下さい」

いや、明らかに右側を歩けるように設計されてるだろ...

そう思ったぼくに、もう一人のぼくから反駁が加わった。

 

 

本当にそうだろうか。本当に最初から片側に寄り、もう片側を歩いていたのだろうか。設置当初は左右両側に乗っていて、後に片側に乗る文化が生まれた可能性はないか。

 

 

 

 

エスカレーターの起源

 

そこで調べてみると...

エスカレーターのマナーに詳しい江戸川大学社会学部の斗鬼正一教授によると、起源は英国だという。第2次世界大戦中に混雑緩和のためのマナーとして考案されたらしい。日本では1967年に阪急電鉄の梅田駅が移転した際、エスカレーターが長くなったので、急ぐ人のために「片側空け」を呼び掛けたのが最初。さらに1970年に開催した大阪万博の「動く歩道」にも、国際化に対応しようと英国式マナーが導入された。つまり、日本では大阪が「発祥の地」だったのだ。

日経スタイル「片側空け→歩行禁止 マナー変わる? エスカレーターhttps://style.nikkei.com/article/DGXMZO81616470W5A100C1000000?channel=DF280120166607&style=1 

 

やはり、本来エスカレーターは両側に乗るものだった。けれど、あまりにもホームが混雑するから片側を通り抜けられるように呼びかけたのが50年前で、それが今まで続いているらしい。っていうかエスカレーターってそんなに前からあったんだ...

ぼくが小さい頃住んでいたのは近くの駅に蒸気機関車が停まってたくらいの田舎だったから、エスカレーターを目にする機会がなかった。初めてエスカレーターを見たのっていつだろう....

 

 

・苦言を呈す業界人

 

閑話休題。では、エスカレーターで歩く人々に対しての意見はというと...

「われわれはずっと注意喚起してきましたが、エスカレーターは歩くことを前提として設計されたものではありません」と力説するのは、昇降機メーカーの業界団体、日本エレベーター協会の担当者だ。

「標準的なエスカレーターは階段と違って横幅が約1mと狭いうえに、ステップの高さは20cm程度と階段よりも高く、乗った時と中央付近、降りる時の高さもそれぞれ違います。また、足元が深くなっているので直角ではありませんし、そんな中を普通の階段を上り下りするイメージで歩くと、立っている人にぶつかったり躓いたりする可能性が高まります」

NEWSポストセブン「エスカレーターの片側空け 長年の慣習を取り払えるか

https://www.news-postseven.com/archives/20170722_596353.html

 

日本エレベーター協会は、他の人にぶつかるなどといった事故が怒る可能性から、歩行を前提として設計していないと力説している。おっと誤字失礼。今回怒っているのは事故ではなく日本エレベーター協会の担当者だ。

日本エスカレーター協会はないのかと検索してみたが見つからなかった。残念。エレベーター協会がエスカレーターも管轄しているらしい。

 

冒頭で書いた通り、鉄道会社側も歩行に対しては注意を呼びかけている。しかし、片側開けろと最初に言いだしたのは鉄道会社であることが判明したので、自業自得だと言わざるを得ない。

 

 

 ・世界のエスカレーター

 

関西の場合は右立ち左開け、というのはあなたも聞いたことがあるかもしれない。しかし、他の国々でエスカレーターに乗る時、どちらを開けるのかを知っている人はほとんど居ないのではないだろうか。もし知っているなら、その人は相当変わった人だなと思う。

 

その後片側空けは欧米各国に、さらにアジアにも広がり、現在世界ではイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ハンガリーなどのヨーロッパ諸国、アメリカ、アジアでも香港、台湾、中国、韓国などが右立ち、左空けで、圧倒的に多い。

他方の左立ち、右空けは東京を中心とした日本各地の他には、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどで行われている。

 

『情報と社会』第25号「エスカレーター片側空けという異文化と日本人のアイデンティティ

https://www1.edogawa-u.ac.jp/~tokim/esukaretakatagawaake.html

 

なんと、ヨーロッパ諸国・アメリカ・アジアの大半が右立ち左開けで、東京のような左立ち右開けは少数だったのである。つまり、日本の中でも関西のみが世界レベルであり、東京は異端だと言える。

 

なぜこうなってしまったのか。その秘密は、この習慣の広まり方にある。

日本でエスカレーター片側空けが始まったきっかけとなったのは、阪急電鉄による呼びかけである。ムービングウオーク、エスカレーターが設置された阪急梅田駅で右側に立ち、左側を空けるようにという呼びかけが行われたのである。実際には、最初のスウェーデン製はベルト式のためすぐに壊れてしまったというほど歩く人が多かったといわれるが、この呼びかけがきっかけとなり、日本で初めての片側空けが行われたのである。

 

地下深くに建設された千代田線新御茶ノ水駅には長大なエスカレーターが設置されたが、開業当時、乗客は左右構わず立ち、そばに階段もないため、急ぐ乗客も我慢する他ないという状況だった。しかし1989(昭和64、平成元)年ころ、自然発生的に片側空けが始まった。同年の読売新聞には、「新御茶ノ水駅にロンドン方式現る」という記事が掲載されている。ただし、ロンドン方式といっても、ロンドンとは逆の左立ち、右空けである。

引用:同上記事より

 

上の方の日経スタイルの記事にも書いてあったが、最初に阪急電鉄、つまり関西勢力が海外を参考に片側空けを呼びかけた。そのあとに東京では自然発生的にこの習慣が始まったのである。

海外を参考にしたから当然関西は海外と同じということだ。

 

一方、東京は何も参考にせず、自然に始まった結果、真逆になってしまった。それにしても読売新聞の「新御茶ノ水駅にロンドン方式現る」というタイトルはウルトラマンの次回予告みたいで面白い。

 

 

エスカレーターの正しい乗り方とはなにか

 

さて、ここまで読んで読者諸君はさぞ混乱したことだろう。「結局どう乗るのが正解なの?」「今までの常識が覆されて、どうすればいいのか分からない」

 

安心して欲しい。そんなあなたのためにとっておきの提案を用意した。果たしてその提案とは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を使いましょう。

 

 

おわり。

 

 

 

 

 

 

 

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