かんぱねら

知的好奇心の沼へようこそ

人間は動物だ→正しい、動物は人間だ→間違い

今でもよく覚えている。中学で授業を受けている最中、先生がこんなことを言い出した。

 

 

 

「『人間は動物』だけど、『動物は人間』じゃないでしょ。前後を入れ替えると成立しないことがあるんだよ。」

 

僕はこれを聞いた時すごくモヤモヤした。いや、もちろん言いたいことは分かる。「AはBだ」のABを入れ替えると成り立たない時がある、と。

 

しかし、例が適切でない気がしたのだ。

 

もしかしたら、あなたは特に違和感を覚えないかもしれない。しかし、こうしたらいかがか。彼が言うには、つまり

 

「人間=動物だけど、動物=人間ではない」

 

ということ。

こうすると、「あれっ」と思うでしょう。

=というのは左右の内容が同じであることを指す。つまり左右を入れ替えても成立するはずである。2×3=6は6=2×3とも表せる。なのに何故、人間と動物は入れ替えられないのか。

 

これは、そもそも前提が間違えているからだと考えた。

 

要は、人間=動物が間違いということ。

 

先程も述べたように、=は左右の内容が同じことを示す。「人間」と「動物」は同じ内容か?

いや、違う。

この式を成り立たせるには、こうするべきだ。

 

人間=動物の内の一種

 

こうすれば、前後を入れ替えても成り立つ。

 

動物の内の一種=人間

 

この場合、人間の部分には動物であればなんでも入ることになる。左右の内容も一致している。

 

かくして、胸のモヤモヤは晴れたのであった。思い返してみれば、これを言ったのは数学教師だった。おおかた、命題p→q(pならばq)の逆(qならばp)は成り立たないという数学的な考え方と混同したんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ここまでは、中学生の頃僕が導き出した答えだった。ここからが本番だ。

 

わざわざ記事にしているのは、僕が自分の過ちに気づいたからである。

 

先程わかりやすいように、「人間は動物」を「人間=動物」と置き換えたが、これは間違いである。

 

1+1=2(いちたすいちはに)のように、僕らは=を「は」と呼んでいるので、一見両者は同じもののように思える。

しかし、=の読み方としての「は」と日本語の助詞としての「は」は全くの別物であり、置き換えるのは適切ではない。

 

例えば、「僕は医者です」という文がある。これが正しい文であることは明らかだが、僕の先程の主張によれば「僕は医者のうちの一人です」と言わなければならない。普通こんな回りくどい言い方はしない。

 

日本語における「は」には、所属の意味がある。よって、人間は動物に所属しているという意味の「人間は動物だ」を逆にすると「動物は人間だ」になり、所属の意味が成り立たない。

 

「=」と「日本語における『は』」を混同していたのは僕の方で、あの先生が言っていたことは正しかった。

意味が違うものを勝手に置き換えて勝手に曲解した僕が馬鹿だったのだ。

 

こうやって話が噛み合わないという現象が起きるのか、と勉強になったフシもある。言葉を大切に、正しい意味で捉えるように心がけたい。

 

 

おわり。

 

 

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